Physarum 粘菌
「跡を残す」「跡をたどる」という局所的なやり取りから、全体のネットワークが生まれる。粘菌に着想を得た粒子モデルの実験場です。
使い方
- 網目形成:一様に散らした粒子が、自分たちの化学物質の跡に集まって構造を作ります。少し待って模様の成長を観察してください。
- 餌場を結ぶ:5つの持続する誘引源を配置します。粒子の集まり方や経路が、餌のない場合からどう変わるか比較できます。
- 障害物:壁と餌が置かれた状態から開始します。壁の隙間を広げたり、新しい壁を描いたりして、経路の変化を観察できます。
- 餌を置く:クリック/タップで追加します(最大32個)。餌は食べ尽くされず、取り除くまで化学物質を供給し続けます。
- 壁・跡・消しゴム:ドラッグして描きます。壁は粒子の移動と化学物質の拡散を遮ります。消しゴムは壁・餌・跡を消します。粒子そのものは消さないので、跡は再び現れることがあります。
- 一時停止:停止中も実験場を編集できます。「やり直す」で現在のパラメータのまま、選択中のプリセットの初期配置に戻せます。停止状態は保持されます。
- スマートフォン:右上の歯車で設定を開閉します。動きが重い場合は粒子数や実験速度を下げてください。
- PNGで保存:現在の実験場を画像として保存します。
粘菌と、このモデルの関係
真正粘菌 Physarum polycephalum の変形体は、多数の核を持つ一つの細胞として広がり、輸送ネットワークを形成します。この画面の粒子は独立した粘菌の個体ではなく、集団的な輸送や走化性を表す計算上の要素です。
Jeff Jonesの粒子ベースの研究に着想を得て、3方向の感知、旋回、移動、化学物質の放出、拡散・減衰を組み合わせています。本ページは仕組みを体験するための独自の簡略実装で、論文の全条件を再現したものではありません。
一つの粒子がすること
- 進行方向の前方と、左右に角度を付けた位置で化学物質の濃度を読む。
- 前方が最も濃ければ直進。左または右が濃ければ、その方向へ旋回する。前方が両側より薄ければ左右どちらかにランダムに旋回する。
- 1格子分進む。移動先が壁・境界・別の粒子にふさがれていたら、その場で向きを変える。
- 移動に成功した位置に化学物質を放出する。
濃い跡に粒子が集まり、そこへさらに跡を残す正のフィードバックと、拡散・蒸発による平滑化と忘却が同時に働きます。粒子同士が全体の地図を共有することはありません。
化学物質の更新
C̃ = C + 粒子の放出 + 餌からの供給
C次 = (1 − e) × [(1 − d) C̃ + d × 近傍平均(C̃)]
C次 = (1 − e) × [(1 − d) C̃ + d × 近傍平均(C̃)]
d は拡散の強さ、e は1ステップ当たりの蒸発率です。近傍平均には自身と周囲8格子を使います。壁の内部は濃度0とし、壁・外周との境界では流出を抑えます。感知の際も壁の向こう側を直接読まないようにしています。
計算は360×360格子、通常速度で1秒当たり30ステップを目標に進みます。処理が追いつかない端末では実時間より遅くなります。粒子数は一定で、繁殖・死・遺伝・進化は扱っていません。
パラメータで何が変わる?
- センサー距離:どのくらい先の跡を読むか。細かな構造と大きな構造の形成に影響します。
- センサー角度/旋回角度:どの方向を見て、どの程度曲がるか。蛇行、集中、網目などの挙動が変わります。
- 拡散:跡が周囲へ広がる強さ。離れた粒子が跡を見つけやすくなる一方、細い模様はぼやけます。
- 蒸発:古い跡が消える速さ。小さいほど履歴が残り、大きいほど最近の通り道が強調されます。
- 粒子数:混雑と化学物質の供給量が変わります。変更時は粒子と跡を初期化しますが、描いた壁と餌は保持します。
試してみる実験
- 網目が育ったら一時停止し、消しゴムで一本の跡を横切るように消す。再開すると、同じ道が戻るか、別の道ができるか?
- 餌場の一つを消し、別の場所に置く。以前の跡が残る時間は、蒸発率によってどう変わるか?
- 餌への通り道に壁を描く。隙間を開けたとき、どのような経路が育つか?
ネットワークができても、最短経路や最適解を保証するものではありません。「餌場を結ぶ」は観察のテーマで、すべての餌場が必ず接続されるという意味ではありません。再編成の結果は初期配置とパラメータによって変わります。
参考文献
- Jeff Jones (2010), “Characteristics of Pattern Formation and Evolution in Approximations of Physarum Transport Networks,” Artificial Life, 16(2), 127–153. DOI
- Jeff Jones, “The Emergence and Dynamical Evolution of Complex Transport Networks from Simple Low-Level Behaviours.” 著者論文(arXiv掲載2015)
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